#14採用における「入口の多様化」はなぜおきたか

ここ数年ほどの間に、新卒採用において、「複数の入り口を用意して、そこから多様な人材を取り込む」というやり方を用いる企業が増えてきました。

 

もう少し具体的に言うと・・・・
「ナビサイトからエントリーさせて、適性検査や面接によりコミュニケーション能力を評価する」

という一般的な選考フローだけでなく、「一芸採用(得意技を披露して、それを評価する)」だとか、

「ゼミナール推薦による採用(能力や志向性が近い大学のゼミを事前に指定して、そこからの推薦によって採る)」といったさまざまな入り口を用意して、そこから多様な人材を取り込む

 

・・・・という採用のあり方です。

横浜国大・服部ゼミではこれを、「マルチ・パス型の採用」と呼ぶことにしています。

 

このマルチ・パス型の採用、企業によって導入の経緯は微妙に異なるけれど、ごく大まかに言えば、

(1)多様な入り口を設定することで、人材の画一化を防ぐことと、

(2)新しい採用に挑戦したいと思いつつも、いきなり選考フローを大きく変えるのはリスクが大きいと感じている企業が、リスク分散の観点から複数のフローを設定する、

 

という2つがあると僕はみています。

 

・・・とここまでは、これまでのケーススタディからある程度わかっていたのだけれど、そもそもどんな事情を抱えた、どんな企業において、この「マルチパス」の導入が行われたのかが、イマイチわからなかった。。
事例の数が少ないから統計解析をすることができず、だからといって個別ケースに目を向けだすと、実にさまざまな「変数」が浮かび上がってしまって、その中でどれが重要なのかが判然としない。
この数十年ほどの間、経営学の主要なツールであり続けてきた「統計解析」と「ケーススタディ」の両方が役に立たない事に愕然とし、ドンづまっていたのが、この2ヶ月ほどの僕でした。

 

ブレークスルーのきっかけになったのは、配置構成的比較法(configurational comparative methods)という方法です。
ファジー集合やブール代数といった基礎的な数学を使って、複数ケース間の分析をソリッドに行う手法であり、「関連する変数が多く、事例の数がそれほど多くない現象」を分析する際に、威力を発揮する方法です(「関連する変数が多く、事例の数が多い現象」であれば統計解析をすれば良いので!)。
「統計分析とケーススタディの中間にあって、両者を架橋する方法」といったら、言い過ぎでしょうか。
かなり以前に提唱された手法なのですが、ようやくキャッチアップできました。。

 

・・・・とにかくその方法によって分析をしてみたら、上記のようなマルチパスの採用は、

(1)「相互に関連の薄い事業を複数抱えた」企業が、「急速な成長」を遂げた場合、あるいは、
(2)「IT以外の業種」で「創業間もない若い企業」が「急成長」を遂げた場合、あるいは、
(3)「従業員規模1000名を超える企業」が「業績の低下に陥った場合」、あるいは、
(4)「IT業界」において「創業から30年以上が経過した長寿企業」が「低業績」に陥った場合

 

に発生する確率が高い・・・・という結果を得ることができました。

なぜそうなったのか、その解釈についてはまだまだ検討の余地があるのですが、結果そのものはとても納得のいくものだと思っています。

 

人生は、「困難」と「学習による突破」の連続です。
今日はぐっすりと眠れそうです。