大変お待たせいたしました!
2017年6月に行った服部ゼミナールの第5期生採用についての振り返りが終わったので、ここに掲載させていただきます。
昨年同様、今年も多様性のある人材を集めるために「マルチパス採用」をテーマに掲げ、採用活動を行いました。昨年度を参考にしつつその反省も踏まえ、新たな手法も取り入れることができました。
※以下の文章は、タスクとグループディスカッション、つまり選考に直接関わった部分を、簡単にピックアップしたものであり、かなり省略されています。実際に採用に参加してくださった方は特に、説明会も含めた全採用フローや、詳しい説明・分析の記載があるPDFファイルをご覧ください。↓
●1 今回のゼミ採用の目的
⇒現状の4期生に足りない、または4期生がゼミ活動に必要だと感じている、
・リーダーシップを持つ人材
・ゼロから考えたことを即行動に移せる集団
・成長したい意欲のある集団
を集めること。
これらをもとに、現状のゼミ活動を顧みながら欲しい能力についての議論を重ね、8つの観点で評価対象能力を設定した。
〈タスクで測る観点〉
①批判的な思考
②創造性(様々な視点から物事を考える力)
③情報選別力
④頭の回転の速さ
〈グループディスカッションで測る観点〉
⑤集中力(論点をずらさない力)
⑥対立を恐れない批判、論理的な批判をする力
⑦納得できる結論に導く力
⑧他人の意見を引き出す力
以上の8つを測定すべき観点として、問題を設定することにした。
●2 各タスク・グループディスカッションの詳細
○タスク①
(5/16 19:00~5/19 13:00 服部ゼミHPにて公開)
※
タスク①に関しては、論文から引用した問題があったため、問題文を直接掲載せず、問題の趣旨の説明のみに控えさせていただく。
・問1
2つの横並びの投函口の下に「手紙・はがき」「その他の郵便」という表示がそれぞれあるポストのイラストを見て、このポストの問題点を100字程度で指摘する問題である。
・問2
事務所にて外国語によるクレームの電話があった時、相手の言うことも分からず、また事務所内に外国語のわかる者もいない場合にどう対応するかを問う問題である。
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〈評価対象能力〉
問1
→【クリティカル・シンキング(批判思考)=評価対象能力①を測る問題】
クリティカル・シンキングとは、「命題やモデルといった何らかの形式で提示された主張を、ある規準に基づいて批判的に評価する思考」のことである。
本問題は、普段は何気なく見過ごしてしまいがちと思われるものに対し、具体的にどのような問題があるのかを的確に指摘することが求められる。
問2
→【ラテラル・シンキング(水平思考=評価対象能力②)を測る問題 】
ラテラル・シンキングとは、「問題解決のために、既成の理論や概念にとらわれずアイデアを生み出す思考」のことである。
本問題は、簡単には解決策が出そうにない問題状況の中で、柔軟な発想で解決策を導き出すことが求められる。
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〈採点基準〉
問1
Ⅰ. 問題を的確に指摘しているか
Ⅱ. 指摘した問題が本質的かどうか
問2
Ⅰ. 短期間でできる対応をしているか
Ⅱ. 常識的な枠組みを超える発想をしているか
※問1、問2ともに採点基準は使用した論文より引用。
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〈採点方法〉
4期生に服部先生を加えた評価者各自がエントリー者の回答に順位付けを行い、1位を3点、2位を2点、3位を1点とした。評価者全員による最終的な採点の合計点数を各エントリー者の点数とした。
○タスク②
(5/19 19:00~5/22 23:59 タスク①提出者にメールにて配布)
※問題は服部ゼミ4期生が独自に作成したものである。
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〈評価対象能力〉
→【情報選別力=評価対象能力③を測る問題】
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〈採点基準〉
・評価軸の有無:明確な方針があるか
・情報の過不足:必要な情報が不足してないか、必要のない情報を付加してないか
・伝わりやすさ
…Ⅰ.「咀嚼度」:専門用語を使わない等、誰でも理解できる様な言葉づかいであるか
Ⅱ.「スマートさ」:具体から抽象への運び方や内容の重要度を考慮した並べ方など、 いわゆる文章構成のうまさはどうであるか
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〈採点方法〉
タスク①と同様に、4期生に服部先生を加えた評価者各自がエントリー者の回答に順位付けを行い、1位を3点、2位を2点、3位を1点とした。評価者全員による最終的な採点の合計点数を各エントリー者の点数とした。
○タスク③
(6/1 4限または5限に実施)
※タスク③についてはインターネットから問題を引用したため、問題の掲載は控えさせていただく。
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〈評価対象能力〉
→【頭の回転の速さ=評価対象能力④を測る問題】
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〈採点基準・採点方法〉
制限時間20分間で、全40問の選択式問題の『IQテスト』を実施。
「正解を+2点、不正解を-1点、無回答を0点」と設定することで、解き終わらなかった分や分からなかった分の問題を当てずっぽうで回答することを防止。
できるだけ正確な能力の測定に近づけられるよう努めた。
○グループディスカッション
(6/1 4限または5限に実施)
※問題は服部ゼミ4期生が独自に作成したものである。
形式:
・制限時間:20分間
(20分間の議論のあとに1分間の結論と理由の発表タイム)
・人数:Aグループ9名
Bグループ10名
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〈評価対象能力・採点基準〉
この課題では、4つの能力の測定を行った。
【集中力:論点をずらさない力 =評価対象能力⑤】
…Ⅰ. 他人の論点を修正しているか
Ⅱ. 論理的で一貫した発言をしているか
【批判力:納得性のある批判ができる力 =評価対象能力⑥】
…Ⅰ. 論理的な批判をしているか
Ⅱ. 同調圧力・対立しそうな雰囲気に屈していないか
※ただ相手の意見を否定することとは異なる。
【収束力:納得できる結論に貢献する力 =評価対象能力⑦】
…Ⅰ. 定義づけに関して意見を言っているか
Ⅱ. その定義や決議方法に説得性を持たせているか
Ⅲ. 皆の意見をすり合わせているか
【引出力:他人の意見を引き出す力 =評価対象能力⑧】
…Ⅰ. 意見後に他人の意見を求めているか
Ⅱ. 他人の意見を誘発する言葉の選択をしているか
Ⅲ. 話を他人に振っているか
以上の4項目(=評価対象能力⑤~⑧)において、それぞれ0点~5点の6段階で評価を行った。
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〈採点方法〉
評価者は、議論進行中の最終エントリー者を囲むようにそれぞれ位置し、評価基準と6段階評価で得点をつける表が書かれた採点シートとメモ用紙を使用した。
4期生10人に服部先生を加えた11人各自が前述した4つの項目それぞれに関して各エントリー者に対して採点を行い、評価者11人の0点~5点の6段階評価の合計得点をエントリー者の得点とした。
●3 採用方法
(1)「●4 評価対象能力」で挙げた、
タスク1(1)①批判的な思考
タスク1(2)②創造性(様々な視点から物事を考える力)
タスク2 ③情報選別力
タスク3 ④頭の回転の速さ
GD観点1 ⑤集中力(論点をずらさない力)
GD観点2 ⑥対立を恐れない批判、論理的な批判をする力
GD観点3 ⑦納得できる結論に導く力
GD観点4 ⑧他人の意見を引き出す力
以上8つの能力のそれぞれ1つにつき、エントリー者の中で最も高得点を挙げた者1人をそれ以外の条件を考慮せず採用する。
この方法によって、(1)で8名が選出された。
(2)残りの2枠においては、4期生の話し合いによって、「ゼミの活動は議論や話し合いが中心であるため、タスクによる評価よりもグループディスカッションによる評価を優先する」という結論に至った。
よって、(1)で選出した8名を除いたエントリー者において、GDの能力値(観点1~4)を合計し、その点数を各々のGD総合点とした。そして、GD総合点の上位2名を選出することとした。
以上の方法によって、(2)で2名が選出され、(1)に加えて合計10名の選出を行った。
●4 分析
①タスクについて
順位相関の分析からは、タスク3(評価対象能力④:頭の回転の速さ)とGD1(評価対象能力⑤:論点をずらさない力)に負の相関が確認できた。頭の回転が速いため問題に対して次々とアイデアや答えが浮かぶため、この能力はグループディスカッションのうち論点を絞って話を進める場面ではあだとなってしまうのか。
②グループディスカッションについて
順位相関の分析の結果、評価対象能力⑥(対立を恐れない批判、論理的な批判をする力)、⑦(納得できる結論に導く力)、⑧(他人の意見を引き出す力)はどれも1%水準で相関係数0.6以上の結果が出ている。グループディスカッションにおいて、「納得性のある批判ができる力」、「納得できる結論に貢献する力」、「他人の意見を引き出す力」はお互いに比較的強い正の相関が現れるということだ。これは去年の4期生採用の際にも表れ、common method bias という同一評価方法の測定による相関の影響が指摘されている。今年も同じような現象が確認されたが、これらはグループディスカッションの評価項目の問題性を示唆しているのではないか。
③GPAについて
順位相関の分析からは、GPAと各能力の相関は前年同様有意のある正の相関は見られなかった。服部ゼミが必要とする能力とGPAには関係がほぼ見られないことを表している。しかし、GPAの値の合格者平均と不合格者平均を比較したところ、0.35程度合格者の方が高いという結果になった。また、GD4(評価対象能力⑧:他人の意見を引き出す力)やタスク1.1(評価対象能力①:批判的な思考)では負の相関が出ている。
④提出順
メール提出によるタスクに、提出が早い順から上位として順位化し、「提出順」として分析に使用した。順位相関の分析の結果、提出順とそれぞれの能力に差は見られなかった。これは時間をかけることで能力が極端に良く評価されるわけではないことを表している。
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最後に、説明会に足を運んでくれた2年生の皆さん、これらのタスクに挑戦してくれたエントリー者の皆さん、ご参加ありがとうございました!本当にお疲れさまでした。
昨年度初めて行われ、今年も用いた「マルチパス採用」。反省点もたくさんありますが、選考する側として昨年度を大いに参考にしつつ、候補者として去年経験したことも生かした採用にできたのではないかなと思っています。
また合格した10人の5期生。改めて、おめでとうございます。私たちが「自分だったら無理」「絶対難しい…」と言いながら作ったタスクで成績を残してくれたことに、心から敬意を表します…!また、これらを読んで「自分はどの項目で採用されたんだろう?」なんて考えてくれたら嬉しいです。
それでは、服部ゼミナール2017年度の採用に関わってくださった全ての方に感謝の気持ちを込めて、ここで締めさせていただきます。
文責:深澤、木村