講義の目的:
研究者を目指す(その可能性のある)人を対象に、研究というものについて考え、議論するための文献と場を提供したいと思います。他大学で社会科学を学ぶ人と、研究というものについて議論することも、重要な目的となります。
受講心得:
この講義はプロの研究者を目指す(可能性がある)人を対象にしています。それ以外の方も参加歓迎ですが、参加する全てに方に、彼ら彼女らと同じ文献を読み、課題に答え、提出することを要求します。「とりあえず覗いてみるだけ」というスタンスは、一切認めないことにします。
そして例外もまた、認めないことにします。
場所:
横浜国立大学みなとみらいキャンパス
横浜国立大学保土ヶ谷キャンパス
講義スケジュール:
#1 5/20(金)18:00-20:00 @横浜国立大学保土ヶ谷キャンパス (済)
#2 6/25(土)17:00-19:00 @横浜国立大学みなとみらい ★
#3 7/30(土)17:00-19:00 @横浜国立大学保土ヶ谷キャンパス
#4 8/27(土)17:00-19:00 @横浜国立大学保土ヶ谷キャンパス
#5 9/24(土)17:00-19:00 @横浜国立大学保土ヶ谷キャンパス
#6 10/22(土)17:00-19:00 @横浜国立大学みなとみらいキャンパス
※この日のセッションは中止し、この日のテーマは#7にて一緒に扱います。
詳細は、以下をご覧ください。
#7 11/25(金)18:00-20:00 @横浜国立大学保土ヶ谷キャンパス
#1科学の進歩について 5/20(金)18:00-20:00 (済)
課題文献:
トーマス・クーン『科学革命の構造』みすず書房 ※要購入
→科学の発展の構造を理解する。研究とはどのようなプロセスで進み、どのようなプロセスで停滞するのか。そのなかで、自分はどのような役割を果たしうるか。こうした点について考えるきっかけを提供してくれる。
#2社会をみる「視点」のバリエーションについて① 6/25(土)17:00-19:00
場所:横浜国立大学みなとみらいキャンパス
→JR 桜木町駅から動く歩道を歩き、ランドマークタワーのオフィ スエントランスから入り、エレベーターC に乗り18階で降り てください。
http://www.b.ynu.ac.jp/ybs/access/ybs_access.pdf
課題文献:
Bryman, A. (2016) “Social research strategies: Qualitative research and quantitative research,” in Bryman A. (ed.) Social Research Methods 5th ed, Oxford University Press.※購入不要(facebookページにて配布します)
→社会科学研究のためのさまざまな視点を概観する便利な一本。実証主義と解釈主義、客観主義と構築主義、定量的方法と定性的方法、そして帰納と演繹。研究者としてどの立場をとるにせよ、自分がとらない立場について理解することは絶対的に必要になる。
#3社会をみる「視点」のバリエーションについて② 7/30(土)17:00-19:00
課題文献:
坂下昭宣(2002)『組織シンボリズム論』白桃書房 ※要購入
→経営学、組織論のすべての研究は、なんらかの「方法論」的前提の上に立っている。方法論的前提は、研究者が物事をどのように見ているかということに関わる極めて重要な問題であるが、残念なことに、そのことに自覚している研究者は決して多くないように思われる。この本は、この部分への自覚をうながし、見つめ直すきっかけを提供してくれる。
#4代表的な調査方法について:サーベイリサーチ 8/27(土)17:00-19:00
課題文献:
ジェラルド・ヘイグ『理論構築の方法』 ※絶版なので印刷して配ります
→定量的手法の一つであるサーベイリサーチについて、それがどのような歩法であるのか、どのような考え方に立脚しているのかということを丁寧に解説してくれる。いわゆる実証主義に立つ研究者の必読文献。
事前課題:以下の点についてA4サイズの用紙に記述し、アウトプットし、2部(自分用と提出用)、持参してください。
(1)自分が所属する組織をリサーチ対象として設定した時、どのような研究課題が考えられるでしょうか。サーベイリサーチをすることを前提とした研究課題と仮説を設定してください。
(2)その研究課題に関してサーベイ・リサーチを実施するとした時、どのような質問票が適切でしょうか。研究課題を検証するための質問票を作成してみてください。
#5代表的な調査方法について:ケーススタディ 9/24(土)17:00-19:00
課題文献:
ロバート・イン『新装版 ケース・スタディの方法(第2版)』千倉書房 ※要購入
参考図書:
井上達彦『ブラックスワンの経営学:通説をくつがえした世界最優秀ケーススタディ』日経BP社
→経営学の優良な調査手法であるケーススタディについて、わかりやすく解説した1冊。サーベイリサーチに代表される定量的方法との違いを理解することで、ケーススタディがもつ独自の優位性について考えるのに役立つ。
事前課題:以下の点についてA4サイズの用紙に記述し、アウトプットし、2部(自分用と提出用)、持参してください。
本書で示されている考えかたに従って、自分がケーススタディをおこなうとしたらどのようにリサーチ設計(research design)にするか、具体的に設計してみてください。
その際、少なくとも、
(1)研究問題(=YH=>研究課題ともいう)は何か?
(2)その探求のために、なぜ「サーベイ」や「実験」ではなく「ケーススタディ」を選択する必要があるのか?
(3)具体的に、どのようなケースに注目するのか?どの企業?どの組織?あるいはどの個人?
できるだけ具体的に記述してください。
(4)複数ケースを扱うのか、単一ケースを扱うのか、なぜそうなのか?
(5)(あるとすれば)その研究における命題とは、なにか?
(6)分析単位は、単一化、複数か、なぜそうなのか?
(7)どのような「証拠源」を活用するか、どうやって複数の「証拠源」を確保するか?
・・・といった点に必ず言及しつつ、あなたなりの面白い研究プランを立ててきてください。
#6研究倫理について 10/22(土)17:00-19:00 →中止
※もともとは10/22(土)17:00-19:00でしたが、服部が学会で講演しなければならなくなったため、この回の分は#7で一緒に扱うことにします。
#7研究倫理について、そして学問を職業とすることについて 11/25(金)18:00-20:00
課題文献:
①ウィリアム・ブロード & ニコラス・ウェイド『背信の科学者たち』 ※要購入
→研究の「倫理」について考えさせられる一冊。なぜ論文の捏造、データの改ざんは起こるのか。どう考えても非合理な行為は、なぜ繰り返されるのか。研究者になる前に、そしてなった後であっても、何度も繰り返されるべき問いであり、それを議論した一冊である。
②マックス・ウェーバー『職業としての学問』岩波書店 ※要購入
→職業として学問をするとはどういうことであって、どういうことでないのか。知の巨人による学問論の古典に対して、現代の研究者としてどう反論するか。批判的な視点から読んでいただきたい。
事前課題:以下の点についてA4サイズの用紙に記述し、アウトプットし、2部(自分用と提出用)、持参してください。
マックス・ウェーバーの著書は、「Persönlichkeit auf wissenschaftlichem Gebiet hat nur der, der rein der Sache dient(直訳:学問の領域で個性を持つのは、その個性にではなく、その仕事(ザッヘ)に仕える者だけである)」という有名なフレーズとともに、世界中の研究者に読まれ、議論を呼んできました。
これはいわば、「研究者の使命は仕事に仕えることである」という主張であるわけですが、
①この言葉にウェーバーはどのような意味を込めたのでしょうか、
②この主張に、あなたはどう反応(同意、部分的同意、反駁・・・なんでも良いです)するでしょうか、研究者の役割とは一体なんなのでしょうか、